職場円満プロジェクト

2012年10月26日

コンプライアンス違反の起きにくい健全組織の作り方【後編】

コンプライアンスに関する8つの素朴な疑問に、専門家である株式会社マコル 取締役・代表コンサルタント、笹本雄司郎氏が明快回答!

 

 専門家、株式会社マコル 取締役・代表コンサルタント、笹本雄司郎氏に聞く、コンプラアンスにまつわる8つの素朴な疑問。部門・チームをまとめる中間管理職として、健全な組織を作るために、どんな点に目配りしたらよいのか、部下への指導のポイントや実際にコンプライアンス違反を発見した場合にどんな行動をとるべきかなど、後編では主に対処法についてアドバイスをいただいた。

 


5、 モラルの低下はどんなときに起こる?

 

 

笹本氏プロフィール.png 2年前、某鉄道会社の駅員と車掌合わせて31名がIC乗車券の記録を操作・加工して不正乗車を繰り返したとして厳しく処分される事件がありました。もちろん、記録を簡単に操作・加工できる業務システムにも問題はありますが、これほど多くの職員が同様の手口で不正行為を行う背景には、「インチキをしてもバレない」、「みんなやっている」、「自分だけばか正直では損だ」という空気が蔓延していたのではないかと想像します。

 

 

 そうした規律の緩みが放置され、どんどんエスカレートした先に何が起こるでしょうか? 

 

 

 職場において手抜き、不正、不干渉が注意・是正されませんと、他の社員にもどんどん伝染し、社員にモラルハザードが生じます。たとえば、交通費や各種手当の申請で、ちょっとしたズルが先輩から後輩に代々引き継がれ、その組織内で習慣化していることも珍しくありません。

 

 

 このように職場の規律を緩めないことは中間管理職の重要な職務ですが、中間管理職に余裕がなくなってしまった現在の日本企業では、こうした職場規律の崩壊や通常では信じられない不正行為が増えているように感じます。

 

 

 職場の会話で、「何が正しいか」ではなく、「発覚するリスクがあるかどうか」の発言が増えてきたら要注意です。内部告発の時代ですから、組織内の問題行動は必ず外部に露呈します。仮に外部に露呈しても説明できるレベルで行動するのが現代のコンプライアンスと考えましょう。

 

 

6、 上司にコンプライアンス違反の疑いが!上手な対処法を教えてください

 

 

 5年前、北海道の食品加工卸業某社の品質偽装表示が元常務取締役等の内部告発によって報道され、警察や行政・自治体が調査・処分に動いた事件がありました。社員を全員解雇した同社は翌年に倒産しました。

 

 

 内部告発した元常務取締役は、NHKの番組「たった一人の反乱」(2009年12月1日放送)で「失うもの多く、得るものなし、むなしい」、「これほど大騒ぎになるとわかっていたら静かに消えていった」、「追い詰められてやった、ヒーローと解釈してほしくない」と率直な気持ちを吐露しています。この言葉の中に内部告発の真実があるのではないでしょうか。特に、当初は複数の退職者で告発グループを形成していたものの、最後に元常務取締役一人の奮闘になるくだりは、この問題の難しさを示していると思います。

 

 

 組織や社会のためを考えて問題提起する勇気は立派です。しかし、自分の生活や人生を守る必要はあります。加えて、告発者の知らない事情もあるので偏った見方に陥いるリスクも否定できません。一方、通報や告発を受けた側の事実調査が不適切で、告発者が窮地に立たされる事態も少なくありません。

 

 

 内部通報窓口は必要です。ただし、内部通報や内部者告発は、決して「安全な解決方法」ではありません。組織内で上司のコンプライアンス違反に困ったら、口の堅い経営陣や先輩に相談し、自分の見方が偏っていないかを判断してもらった上で、情報源がバレないよう上手な対応をお願いするのが賢明でしょう。それが難しければ、じっと沈黙を守るか、専用窓口への通報や行政機関への告発を考えるか、自分で決めるほかないと思います。

 

 

7、 コンプライアンス指導を行うとき、相手に響きやすい説明方法を教えてください

 

 

 先日、ある有名企業のコンプライアンス推進担当者から相談を受けました。社内研修の受講者アンケートに、「業績が厳しいときにコンプライアンスどころではない」、「時間の無駄だ」という回答が増えてきたというのです。

 

 

 この推進担当者の失敗はどこにあるでしょうか?

 

 

 それはコンプライアンスを「仕事とは別にあって仕事を制約するもの」と理解させてしまっている点です。コンプライアンスは仕事が備えるべき品質条件であって、「コンプライアンスなくして仕事なし、会社なし」(槍田松瑩三井物産元会長の言葉)という考え方が教育・指導の中心になければなりません。

 

 

 これを上手に伝えるには、聞き手が自分自身のメリットを感じる説明が必要です。私は通常、たいしたことはないと思っていることがどれほど深刻な事態に発展するか、人間として信用を失ったら自分と家族の生活がいかに崩れてしまうか、といった点に重きを置いて説明します。この点を受け入れてようやく聴く耳を持ち始めるのです。

 

 

 人間は、自分に降りかかるリスクを実感できなければ、問題に取り組もうという動機が形成されません。これは、話し方のテクニックだけではなく、「この組織から不幸な人間を絶対に出さない」という経営陣や管理職の覚悟が伝わるかどうかの問題です。お客さまや裁判官はだませたとしても、社員は絶対にだませないのです。

 

 

8、 健全な職場を作るための管理職の役割って?

 

 

 昨年、有名企業の子会社の食品事業部で、仕入代金の水増しを含む架空取引が長期に渡り継続されてきた事実が発覚しました。親会社の発表によれば、不適切な取引の発見が遅れた背景には、役員・上司らの事業に対する知識・経験の不足、問題のある取引への対応を担当者任せにしてきた役員・上司のコンプライアンス意識の不十分さ、当事者意識の希薄さがあったようです。

 

 

 いちいち部下を疑っていては仕事になりません。しかし、管理職が「見ているぞ」というメッセージを送り続けなければ、バレないと考えた部下が逸脱行動に走る危険は目に見えています。

 

 

 健全な職場を作る上で、私が特に強調しているのは、まず、不正やミスが発生したとき、すぐ上司に申告・謝罪し、事態の回復に尽力・奔走することで自分の信頼を守るよう、日頃から指導を重ねておくことです。

 

 

 次に、管理職が部下一人ひとりの価値観や生活の事情を理解し、よき相談相手として人間関係をしっかり築くことです。そうした太い信頼関係がなければ、重要な報告や相談は期待できません。部下一人ひとりのために自分から配慮して動く上司でなければ、健全な組織は作れないと自覚しましょう。

 

 

 

 

(この記事は2012年10月26日公開のものです)

 

 

 

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 ⇒ コンプライアンス違反の起きにくい健全組織の作り方【前編】

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