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2012年10月11日

厚生労働省労働基準局委託事業 ワークライフバランスを考える「治療と仕事の両立支援セミナー」

働く世代のがん患者およびがん経験者の就労問題とは?

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 男性の2人に1人、女性の3人の1人がかかる「がん」。高齢者の病気というイメージが強いがんだが、実は毎年20歳から64歳の約22万人が、がんと診断されていることをご存知だろうか。また、医療の進歩により、生存率は高まっており、外来治療を続けながら社会生活を送る人が増えている。こういった背景から、今クローズアップされているのが、働く世代のがん患者およびがん経験者の就労問題だ。がん患者の3人に1人が離職または休職し、約7割の患者が減収となっている実態があるからだ(*1)。

 

 今年、「がん対策推進基本計画」に、働く世代や小児へのがん対策の充実が盛り込まれた。また、厚生労働省では、がんも含めた病気を抱える労働者の治療と職業生活の両立支援事業に取り組んでいる。その一環として、9月28日、ベルサール神田(東京都千代田区)で、30名を超える人事労務担当者を集め、「治療と仕事の両立支援セミナー」が開催された(第2回目は10月22日開催、すでに申し込みは終了)(*2)。

 

 当日は、8年前自身も乳がんを経験、がん罹患をめぐる政策提言や就労支援を行う、キャンサー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長・桜井なおみさんより、「がんに罹患した就業者を取り巻く現状」が報告されたあと、自治医科大学医学部 環境予防医学講座 産業医の大津真弓さんが、「がん患者就労支援に産業医が果たす役割」について、実際の対応事例を交えながら解説を行った。最後のプログラムでは、特定社会保険労務士、一般社団CSRプロジェクト理事 近藤明美さんの司会進行のもと、6人から7人のグループに分かれ、グループワークを実施。「がんのイメージ」「上司や同僚、部下ががんになったらどうするか」「休職や復職に関する会社の対応」などのテーマで、積極的な意見交換が行われた。また、治療と仕事を両立した成功事例を挙げてもらい、成功したポイントや残された課題などについて議論、一部発表が行われた。講演のポイントは以下の通り。


(*1)CSRプロジェクト「がん患者の就労と家計に関する実態調査2010」(2011年)
(*2)平成24年度厚生労働省労働基準局委託事業「治療と職業生活の両立等の支援手法の開発(職業性がんその他の悪性新生物)」(委託先:みずほ情報総研株式会社、セミナー企画・運営協力:キャンサー・ソリューションズ株式会社)


■がんに罹患した就業者を取り巻く現状

 

キャンサー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長 桜井なおみさん

 

<以下、ポイント>
・がん患者の3人に1人は、就労可能年齢で罹患している
・弊社が協力したがん経験者を対象にした調査によると、がん罹患後、「就労状況が変わった」と回答した人は53%。内訳は、「依願退職」が30%ともっとも多く、「解雇」「希望していない異動」は合計で17%
・がん罹患について、職場に報告をしなかった人は約3割。その主な理由は、「いっても仕方がない」が52%、「理解してもらえない」が16%
・働き世代のがん問題で大きいのは、「管理職のがん」。経営者・管理職の健康問題は、経営課題でもある
・厚生労働省の「がん対策推進基本計画 ― 働く世代や小児へのがん対策の充実」では、事業者に対し、がん患者が働きながら治療や療養ができる環境の整備、家族ががんになった場合でも働き続けられるような配慮に努めること、職場や採用選考時にがん患者・経験者が差別を受けることのないよう十分に留意することを求めている
・今春、4つの自治体で、がん罹患と就労に関する条例が制定された。この動きは今後自治体の中で広がっていくだろう


■がん患者就労支援に産業医が果たす役割について

 

自治医科大学医学部 環境予防医学講座 産業医 大津真弓さん


<以下、ポイント>
・産業医は病院の医療従事者と企業の橋渡し役である。双方の立場やサポート限界点が理解できるため、主役であるがん患者本人の意向に最大限沿うようなサポートを検討する、就労継続支援のためのコーディネーター的役割が可能
・完治が見込める患者の場合、治療の妨げにならないように、一定期間は仕事をセーブする決断をしていただくことも重要。また、人事上の対応も含め、長期的に、本人と会社の利益がWin-Winになる方法を探る必要がある

・会社が、がん患者の就労支援を行うにあたって大切なのは、一人の労働者の雇用継続支援と捉えること
・治療、通院を続けながら就労できる環境整備については、短時間勤務制度や時差出勤制度など、母性健康管理の施策が参考になる
・貴重な人財確保の視点で、それぞれの企業で積極的な施策を考えていただきたい
・企業で支援を行うキーワードは、「周囲の納得感」。個人ワークよりもチームワークを大切にした仕事の仕方のほうが、危機管理上も有効である。人事考課の方法にも一考が必要

 

 

 

(この記事は2012年10月11日公開のものです)


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