2013年10月28日
クラウドサービス導入・活用「事例に学ぶ成功の秘訣・失敗のタネ」
クラウドワーク スクエア・ITリテラシー向上セミナーレポート
クラウドサービス導入・活用「事例に学ぶ成功の秘訣・失敗のタネ」
東京商工会議所 クラウドワークスクエア
・企業において、ITを利用することはもはや当たり前のこととなっている。しかし、IT活用のメリット・デメリットを詳しく知る人は未だ少なく、特に経営層においては「ITに詳しい社員に任せている」という人がほとんどではないだろうか。
・業務効率の向上や労働環境の改善など、経営層が重要な判断をしなければならない機会はどんどん増えている。
・東京商工会議所では、中小企業の経営者・IT担当者対象に「体験」「学び」「情報収集」の場として「クラウドワークスクエア」(東京・丸の内)を去る6月にオープンし、実際にIT機器の展示・体験やセミナーを通して、中小企業の生産性向上につなげるべく様々な活動を行っている。
・マネジメントリーダーWEBでは、クラウドワークスクエアで開催された「クラウドサービスの導入・活用」のセミナーに参加し、企業が抱える課題と導入活用について探ってみた。
・取材したセミナーは、クラウドサービスの「事例に学ぶ成功の秘訣・失敗のタネ」と題して、経営層やIT担当者が一番関心を持つテーマであった。このセミナーは、通常の講師が一人で話す形式とは違い、ITコンサルタントである熊谷直樹氏が自身の経営経験を基に、導入側が心配する点を中心に解説し、実際の導入については、数々のITサービス導入に関わってきた、株式会社大塚商会営業本部トータルソリューショングループ 小室孝雄課長に質問しながら進行するといった「導入企業視点」での進行であった。
・以下、セミナーの概要についてまとめてみた。
■クラウドサービス導入・活用「事例に学ぶ成功の秘訣・失敗のタネ」
1.利用目的を明確にすることから始める
・「クラウド」という実際に目にすることのできないサービスの利用にあたっては、利用目的を明確にすることが成功のポイントとなるようだ。
・利用目的は、業務効率をアップしたいのか、IT経費の負担を軽減したいのか、会社が被災した時の対策、あるいは新規のビジネスを立ち上げるためなど、会社によってさまざまな目的が存在する。目的を確定した上で、効率よく達成するための方法を検討することになる。この目的が曖昧であれば、導入したシステムが効果を発揮できない失敗に陥ることになる。
・例えば、「業務効率アップ」を目的とした場合は、プロセスを少なくしてスピードアップすることが課題となるが、営業担当者が顧客からの発注メールを確認するために「会社に戻る」時間を短縮する目的で、外出先からメールの確認・返信、在庫状況の確認、発注するには、どこからでも、タブレット等のどんな端末でも社内のPCと同じように利用できるシステム構築が必要になる。
・また、地震や大きな災害によって会社の機能が停止した場合、速やかに復旧する目的の場合は、安心できるクラウドサービスでバックアップをしておく必要がある。目的により、数多くあるクラウドサービスの中から有効なものを選択し活用していくことで解決できる。
2.クラウドサービス導入のポイント
・目的が決まれば次は導入のステップに進むが、「果たしてうまく利用できるのか?」という不安や心配がでるのが常である。それを払しょくするために「小さく始められるシステムから導入」するのが成功のポイントとなる。大がかりなシステムを構築すると容易には変更できない。クラウドサービスのメリットは、端末とネットワークがあればすぐに数百円?数千円程度(利用ライセンス数・サービス内容等により変動)の負担で始められることだ。
・手軽に移行するケースとしては、すでに個人単位や無料サービスで利用している「ファイル転送サービス」を法人利用に切り替えて、運用ポリシーを定めるのが、導入の負担や費用も少なく済む。グループウェア、データバックアップ、データ配信、文書管理などの業務が当てはまるのではないだろうか。
・SFAなどの営業支援(営業プロセスの見える化)を新たに始める場合は、最初に少ないグループ単位で始めて、利用方法・効果を確認して良ければ部署単位⇒全社での利用とノウハウを蓄積しながら進めていくのが確実なやり方とのことである。極論になるがどうにも利用できなければサービス導入を止めても、費用的なロスは軽微で済む。
・新しいサービスをリスクなく気軽に始められるのは、常に進化していかなければならない企業にとって最大のメリットかもしれない。
3.クラウドと自社保有の2軸で考える
・では、自社保有のデータもクラウドサービスに移行するべきなのか? この疑問については、次のような説明があった。
「クラウドと自社サーバーを共存して使い分ける」。
使い分けの例としては、
〇サーバーは自社内設置で災害時のバックアップとしてクラウドサービスを利用する。
〇メール・スケジュール・掲示板などの社外からも利用するサービスはクラウドを活用し、
・・社内だけのアクセスに限定している基幹系は自社保有システムで利用。
・BCP対策のバックアップは別として、社内のみで利用するデータをわざわざ外に置く必要はない。反対に外からアクセスするものは、端末やOSに依存しないクラウドの方が使い勝手が格段によくなる。
4.クラウドサービス利用事例
・セミナーで紹介された利用事例の中から、参考になると思われる主な事例をご紹介する。
■人事・給与明細の発行
・毎月もらう給与であるが、ほとんどの企業ではお金は銀行振り込みで、給与明細が渡されている。これをクラウド化し社員は会社のPCや自宅PC、モバイル端末などで確認し必要があればプリントアウトして手元に持つ。
・この場合、人事給与の基幹系は自社でデータ作成・保有をし、「給与明細」のみをクラウドサービスで配信することにより、給与明細書のプリントアウト・封入・配送の人件費とコストが削減される。社員が多くなるとこの手間とコストは結構な負担となる。
・このケースでは、最長3年間分の給与明細が確認できるため、昨年の給与明細が必要になっても自宅で探す必要や明細書を再発行してもらう必要がなくなり、社員の利便性も向上しているとのことであった。
■使用電力量の見える化
・会社や店舗で消費している電力。環境対策・コスト削減として重要な課題となっている。
・これも、電力計測は自社保有でおこない、管理に必要な「見える化」されたデーターをクラウド化することにより、電力消費状況を24時間どこからでも把握でき、休日につけっぱなしのPCや複合機の電源をリモートでオフすることもできるという。値上がり傾向が続く電力料金の削減や、支店・営業所・店舗が多地点・複数ある場合の一括管理として有効な方法である。
・以上、2時間弱のセミナーの模様を駆け足でご紹介したが、このほかにもクラウドサービス導入の成功のポイントとなることが、非常にわかりやすく説明されていた。
・東京商工会議所の「クラウドワーク スクエア」では、頻繁にこのようなセミナーを開催しており、最新のシステム・機器も体感できるので、クラウドサービスに関心のある方はぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。
<講師プロフィール>
熊谷直樹(くまがいなおき)氏
・1950年、兵庫県姫路市生まれ。東京教育大学(現、筑波大学)卒業。音楽之友社編集部で20年余のコンテンツ制作を経てIT情報出版社を設立、ITという言葉が生まれる前から、ITに関わる製品のマニュアル制作や海外のソリューション情報の提供など、IT市況の遷移に合わせた数多くの著作を手がける。現在は経営観点とITソリューションの融合を図り、総合的な視座でIT導入の相談業務を行いながら、自身の原稿を書き続けている。
<クラウドワークスクエアご案内>
東京商工会議所 クラウドワーク スクエア ホームページ
<参考資料>
大塚商会IT導入相談室
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http://www.otsuka-shokai.co.jp/it-navi/yon/014/
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