コラムBOX

2014年04月28日

年俸制の場合、残業代は発生するのか

労基法の規定と年俸制の残業代について

年俸制の場合、残業代は発生するのか 

 

労基法の規定と年俸制の残業代について

年俸制の場合、残業代は発生するのか 
 
労基法の規定と年俸制の残業代について
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著者:
つなぐナビ登録士業
弁護士 石居 茜 (いしい あかね)
ロア・ユナイテッド法律事務所 パートナー弁護士
http://www.loi.gr.jp/
■労働基準法と残業代
労働基準法(以下、労基法)上、割増賃金(いわゆる残業代)を支払わなければならない場合はどんな場合かご存知ですか。
従業員に1日8時間を超える労働をさせた場合、及び、1週間に40時間を超える労働をさせた場合(一定の業種において常時10人未満の従業員の場合には44時間を超える労働をさせた場合)には、時間単価にした賃金の1.25倍の割増賃金を支払わなければなりません。
また、会社は、従業員に毎週少なくとも1日の休日を与えるか、4週間に4日の休日を与えなければならず、その休日に労働させた場合には、時間単価にした賃金の1.35倍の割増賃金を支払わなければなりません。
そして、時間外労働や休日労働が深夜(午後10時から午前5時まで)に及んだ場合には、時間単価にした賃金の1.5倍(休日であれば1.6倍)の割増賃金を支払わなければなりません。
さらには、平成22年4月1日施行の労基法の改正によって、1カ月60時間を超える時間外労働が発生した場合には、その超えた労働時間については、会社は25%の割増率ではなく、50%以上の割増率で計算した割増賃金を支払わなければならなくなりました。
ただし、労使協定(労働者の過半数代表との協定)により、1ケ月60時間を超える時間外労働を行った労働者に対し、改正法による引き上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払に変えて、有給休暇を付与するという取扱いもできます(2か月以内、1日又は半日単位で取得)。
また、下記の要件を満たす中小企業については、50%以上の割増率について、当分の間適用が猶予されております。
業種 資本金の額または出資の総額 または 常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 または 100人以下
卸売業 1億円以下 または 100人以下
その他 3億円以下 または 300人以下
なお、時間外労働、休日労働をさせるためには、事業場の従業員の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合には従業員の過半数代表との間で書面による協定をし、労働基準監督署に届け出をすることが必要となります(36協定)。
■年俸制の場合の残業代
ところで、業務の性格上、毎月一定の残業が発生してしまうことから、年俸制を採用し、年俸に残業代も含まれていると従業員に説明して、年俸額を12カ月で割り、毎月の給与として支払っている会社があった場合、きちんと法律上の残業代を支払っていることになるのでしょうか。
「うちは年俸制を採用しているから残業代は個別に払わなくていいんだ。」とおっしゃる経営者の方をしばしば見かけます。しかし、年俸制に関しては、次のような判例があります。
年俸制を採用することによって直ちに時間外労働割増賃金等を支払わなくてもよいということにはならない。給料に含まれる割増賃金部分が労基法上計算した割増賃金額を下回っているか否かが具体的に計算できなければならず、賃金のどの部分が時間外労働割増賃金部分や諸手当部分であり、どの部分が基本給部分か明確に定まっていない賃金の定め方は、労基法に反するものとして無効になる。
結論として、過去2年間の割増賃金支払請求を認容しました(創栄コンサルタント事件・大阪地裁平成14年5月17日判決・同様のことを述べた判例としてシステムワークス事件・大阪地裁平成14年10月25日)。
最高裁判例も、月15時間の時間外労働に対する割増賃金を基本給に含める旨の合意がされたとしても、基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意され、労基法によって計算した割増賃金額がその額を上回るときはその差額を支払うことが合意されている場合のみ、月額給与に含まれた割増賃金の支払が有効であるという考えを示しています(小里機材事件・最高裁一小昭和62年7月14日判決・高知県観光事件・最高裁二小平成6年6月13日判決)。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、毎月一定の残業が発生する会社で、「年俸や月額給与の一部に残業代が含まれています」と従業員に説明するだけでは残業代の支払いとして認めてもらえないということです。
残業代の支払いとして認めてもらうためには、毎月の給与のうち、どの部分を割増賃金として支払っているのか給与明細や就業規則で明確に区別し、労基法によって計算した割増賃金額がその額を上回るときはその差額を支払うことを就業規則や労働契約書などに明記しておくことが必要となるのです。
従業員一人の割増賃金請求が認められれば、他の従業員にも波及します。
採用時の経営者と従業員の双方の思い違いによって、会社の経営の根幹を揺るがすような事態が生じることもあります。
自社の給与体系、就業規則がどうなっているか、一度きちんと見直しておかれることをお勧めいたします。
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<著者プロフィール>
 
つなぐナビ登録士業
弁護士 石居 茜(いしい あかね)
ロア・ユナイテッド法律事務所パートナー弁護士

 

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著者:

つなぐナビ登録士業

弁護士 石居 茜 (いしい あかね)

ロア・ユナイテッド法律事務所 パートナー弁護士

http://www.loi.gr.jp/


■労働基準法と残業代

労働基準法(以下、労基法)上、割増賃金(いわゆる残業代)を支払わなければならない場合はどんな場合かご存知ですか。


従業員に1日8時間を超える労働をさせた場合、及び、1週間に40時間を超える労働をさせた場合(一定の業種において常時10人未満の従業員の場合には44時間を超える労働をさせた場合)には、時間単価にした賃金の1.25倍の割増賃金を支払わなければなりません。


また、会社は、従業員に毎週少なくとも1日の休日を与えるか、4週間に4日の休日を与えなければならず、その休日に労働させた場合には、時間単価にした賃金の1.35倍の割増賃金を支払わなければなりません。


そして、時間外労働や休日労働が深夜(午後10時から午前5時まで)に及んだ場合には、時間単価にした賃金の1.5倍(休日であれば1.6倍)の割増賃金を支払わなければなりません。


さらには、平成22年4月1日施行の労基法の改正によって、1カ月60時間を超える時間外労働が発生した場合には、その超えた労働時間については、会社は25%の割増率ではなく、50%以上の割増率で計算した割増賃金を支払わなければならなくなりました。


ただし、労使協定(労働者の過半数代表との協定)により、1ケ月60時間を超える時間外労働を行った労働者に対し、改正法による引き上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払に変えて、有給休暇を付与するという取扱いもできます(2か月以内、1日又は半日単位で取得)。


また、下記の要件を満たす中小企業については、50%以上の割増率について、当分の間適用が猶予されております。

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なお、時間外労働、休日労働をさせるためには、事業場の従業員の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合には従業員の過半数代表との間で書面による協定をし、労働基準監督署に届け出をすることが必要となります(36協定)。


■年俸制の場合の残業代

ところで、業務の性格上、毎月一定の残業が発生してしまうことから、年俸制を採用し、年俸に残業代も含まれていると従業員に説明して、年俸額を12カ月で割り、毎月の給与として支払っている会社があった場合、きちんと法律上の残業代を支払っていることになるのでしょうか。


「うちは年俸制を採用しているから残業代は個別に払わなくていいんだ。」とおっしゃる経営者の方をしばしば見かけます。しかし、年俸制に関しては、次のような判例があります。


年俸制を採用することによって直ちに時間外労働割増賃金等を支払わなくてもよいということにはならない。給料に含まれる割増賃金部分が労基法上計算した割増賃金額を下回っているか否かが具体的に計算できなければならず、賃金のどの部分が時間外労働割増賃金部分や諸手当部分であり、どの部分が基本給部分か明確に定まっていない賃金の定め方は、労基法に反するものとして無効になる。


結論として、過去2年間の割増賃金支払請求を認容しました(創栄コンサルタント事件・大阪地裁平成14年5月17日判決・同様のことを述べた判例としてシステムワークス事件・大阪地裁平成14年10月25日)。


最高裁判例も、月15時間の時間外労働に対する割増賃金を基本給に含める旨の合意がされたとしても、基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意され、労基法によって計算した割増賃金額がその額を上回るときはその差額を支払うことが合意されている場合のみ、月額給与に含まれた割増賃金の支払が有効であるという考えを示しています(小里機材事件・最高裁一小昭和62年7月14日判決・高知県観光事件・最高裁二小平成6年6月13日判決)。


ちょっとわかりにくいかもしれませんが、毎月一定の残業が発生する会社で、「年俸や月額給与の一部に残業代が含まれています」と従業員に説明するだけでは残業代の支払いとして認めてもらえないということです。


残業代の支払いとして認めてもらうためには、毎月の給与のうち、どの部分を割増賃金として支払っているのか給与明細や就業規則で明確に区別し、労基法によって計算した割増賃金額がその額を上回るときはその差額を支払うことを就業規則や労働契約書などに明記しておくことが必要となるのです。


従業員一人の割増賃金請求が認められれば、他の従業員にも波及します。

採用時の経営者と従業員の双方の思い違いによって、会社の経営の根幹を揺るがすような事態が生じることもあります。


自社の給与体系、就業規則がどうなっているか、一度きちんと見直しておかれることをお勧めいたします。


<関連情報>

 営業社員には残業代を支払わなくてもよいか?

 http://www.mng-ldr.com/column/2014/04/21/post-20.php

 

会社が年休の買取や休暇の時季を指定することは可能なのか?

 http://www.mng-ldr.com/column/2014/05/19/post-22.php

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<著者プロフィール>

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弁護士 石居 茜(いしい あかね)

ロア・ユナイテッド法律事務所パートナー弁護士


専門分野は労働法。人事労務を中心に会社の法律相談、労働審判、訴訟などを担当しています。特徴としては、就業規則の作成・改定・給与体系の見直しができ、残業請求対策を提案します。最近は、・相続・中小企業の事業承継にも力を入れています。現在財団法人ベターホーム協会の社外理事を務めています。

連絡先:
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東京都港区虎ノ門1-1-23 虎ノ門東宝ビル9階
TEL  03(3592)1811(担当秘書直通)
TEL  03(3592)1791(代)
FAX  03(3592)1793
 
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