コラムBOX

2014年02月21日

大雪災害から考察する「リスクマネジメント」

大雪災害のニュースから読み解く「不測の事態」への備え

大雪災害に見る「リスクマネジメント」

 

大雪災害のニュースから読み解く「不測の事態」への備え

大雪災害に見る「リスクマネジメント」
大雪災害のニュースから読み解く「不測の事態」への備え
 
先日の日本列島を襲った大雪は各地に大きな被害をもたらし、1週間経過した今でも
孤立した世帯が存在している。異常気象だけでなく地震や洪水などの「自然災害」や
「突然の事故・事件」で生活や仕事の被害を受ける可能性は常にある。そして、大き
な被害を受けるほど「被害を未然に防げなかったのか」と後悔することになり、「想
定外だった」との言葉で総括される。
特に自然の大きな変動に対しては、例え想定したとしても防ぎようのないことは無数
にある。マネジメントリーダーWEBに防災のリスクマネジメントを専門とする昆正和
氏が次のような文章を寄せている。
こんなエピソードがあります。大地震が起こったとき、工場で働いていた外国人従業
員たちは作業の手を止めるなり、全員一緒に脱兎のごとく屋外へ逃げ出した。日本人
従業員の方は、避難した人・しなかった人、バラバラだった。
外国人の彼らには、言葉も文化も違う馴染みのない日本という土地で、いざというと
き頼れるのは自分の身一つだという意識が働いていたのでしょう。防災の手引きなど
には「あわてずに避難誘導係の指示に従い……」などと書かれてありますが、生死を
分ける瀬戸際のときは、こうした理屈は通用しません。まず自分の身を守る。もちろ
ん近くに危険に気づかない人、負傷した人がいれば大声で呼び掛けたり、全力で助け
なければいけませんが、これはヤバイぞと感じたら自身の危険本能に従ってただちに
逃げる。これが基本です。
マネジメントリーダーWEB
昆正和氏著作「リスクセンスを磨こう!第10回 たかが避難、されど避難」
自分の命にかかわる非常事態では「自然の感覚=本能」を研ぎ澄ますことが肝要であ
るようだ。昆氏は山登りを通して「不測の事態」を体感し、どう対処するかを自然に
習得することを「リスクマネジメント」の観点から提唱している。道に迷ったり、足
を踏み外したりした場合、どのように対処するか、どのように気を付けるかを強く胸
に刻み学習していくことになる。それが生まれもって持っている危険本能を研ぎ澄ま
すことにつながるのかもしれない。
■大雪で学ぶべき「リスクマネジメント事例」その1
今回の大雪で企業のリスクマネジメントに参考になる事例が2つニュースとなった。
一つは、大雪による渋滞で高速道路で一晩明かした人たちに、配送中のパンを無償で
配布した例である。配送中のドライバーが気転を効かせたのか、本部の確認を取った
のかは不明だが、「被災した際に自身が大丈夫であれば、周囲の救助・協力を優先す
る」とあらかじめルール化し周知徹底していれば、とっさの時に悩まず迅速に行動で
きる。ニュースやネット上ではメーカーへの賛辞が相次ぎ「これからは○○パンしか
買わない」とのコメントまで紹介されていた。リスクマネジメントだけでなくCSRの
観点からも有効な事例である。
また、山崎製パン広報部のコメントも無償配布したことを決して驕らずに、配送先の
スーパー・コンビニでの品不足を踏まえて、商品を届けることができなかったことを
詫びている。企業として本来業務の流通トラブルという視点を踏まえて取引先・ユー
ザーに向けたコメントとなっている。この広報コメントがあることによってさらに企
業に対しての信頼感や期待感をさらに強めたのではないだろうか。
一方で、雪による渋滞の街道にある某コンビニでは、食料を買いに殺到したドライバ
ーたちに入店制限をかけ寒空のもとで待たせたことにより、ネット上では写真入りで
無慈悲な店としてやり玉にあがっている。お店の混乱を避けるためのやむを得ない処
置だったのかもしれないが、近隣の食堂などが温かい炊き出しを無償配布したように
、食料品を店頭で無償配布を行っていれば全く逆の評価になったのではないだろうか
。被災エリアでの企業活動はビジネスよりも人道措置を優先することの大切さを目の
当たりにする事例ではないだろうか。
■大雪で学ぶべき「リスクマネジメント事例」その2
もう一つの事例は、災害復旧の対応である。被災した場合「いかに早く立ち直るか」
がBCP/BCM(事業継続)から必要な要素となる。
長野県佐久市では、大雪の被害状況を把握するためにTwitterを活用して、情報提
供を呼びかけ、寄せられた市内の状況を撮影した画像をもとに状況把握して市の職員
や付近の住民に的確な指示を出し、迅速に対応したことが伝えられている。
被災状況の報告は、言葉だけではなかなか正確なイメージを伝えにくい。特に現場が
パニック状況に陥っている場合、救助にかかわる情報が伝わりにくく正確な判断をす
るのが困難になり「現場に誰かが行ってみないとわからない」状況になる。
写真や動画は、言葉で説明するより瞬時に現場の状況がわかる重要な情報となる。い
まではほとんどの人が写真や動画が撮影して送信できるケータイ・スマホを持ち歩い
ている。一昔前まではテレビ局でなければできなかったことが、誰でもできる環境が
整っている。
問題はその環境をうまく利用する術を備えているかだ。東日本大震災の際も、電話は
つながらないがデータ通信のSNSやTwitterはつながりやすかったため安否確認などの
緊急連絡手段としてモバイルデータ通信を採用している企業は多い。これも非常事態
に有効に機能させるためには、仕組みやルールを作るだけでなく「訓練」を定期的に
行い普段からすぐに使えるように「慣れておくこと」がポイントだ。いざという時に
操作に戸惑うことがないようにすることと、送られてきた画像などを読み取り正確な
判断をするための経験や訓練が必要である。そのためのマニュアルを用意することで
「報告する側」と「判断する側」の情報共有にブレが少なくなり、効果・効率的な措
置を迅速に行うことが可能になる。
「災害は忘れたころにやってくる」というが、自社のリスクマネジメントという観点
で今回の大雪災害を通してBCP/BCMの見地から「非常時の対応(従業員/家族の安否確
認・業務運営・施設/設備管理)」、「顧客・仕入れ先などの関係先の対応」、「広
報(社内・社外)」、「地域・社会に対しての対応」、「緊急時の情報連絡システム
」、といった広い視野でのリスクマネジメントとして検証してみてはいかがだろうか
。いつ発生するのかわからない「地震」などの広域災害の対処に役立つはずである。
マネジメントリーダーWEB編集部
<参考>
リスクセンスを磨こう!※閲覧には無料会員登録が必要です
第3回 時間軸でリスクを捉える(1)
http://www.mng-ldr.com/member/2013/01/23/post-13.php
第4回 時間軸でリスクを捉える(2)
http://www.mng-ldr.com/member/2013/02/25/post-20.php
第5回 リスクが顕在化したときの「結果」をイメージすることの大切さ
http://www.mng-ldr.com/member/2013/03/11/post-22.php
第6回 情報リスクの今昔
http://www.mng-ldr.com/member/2013/04/24/post-26.php
第7回 オルタナティブな発想を持とう
http://www.mng-ldr.com/member/2013/05/07/post-48.php
第8回 コインの裏と表
http://www.mng-ldr.com/member/2013/05/14/post-30.php
第9回 リスクのもぐらたたき?
http://www.mng-ldr.com/member/2013/06/10/post-33.php
第10回 たがが避難、されど避難
http://www.mng-ldr.com/member/2013/07/16/post-47.php
 
第11回 大きな失敗の陰に小さなリスクあり
http://www.mng-ldr.com/member/2013/08/26/post-56.php
第12回 一人オフィスで災害に立ち向かう
http://www.mng-ldr.com/member/2013/09/18/post-62.php
昆正和氏著作「山で正しく道に迷う本」(日刊工業新聞社)
http://pub.nikkan.co.jp/books/detail/00002662

 

イメージタイトル 300pix.png 

2月上旬に相次いで日本列島を襲った大雪は各地に大きな被害をもたらした。めったに雪が積もらない地方では「想定外」の事態であり備えがないが故の被害が増大する。大雪以外でも暴風雨・地震・津波など「自然災害」で生活や仕事の被害を受ける可能性は常にある。昨年秋の「竜巻」など地球温暖化に起因すると言われているこれまで経験しなかった「異常気象」は今後も頻繁に発生する可能性は高い。


企業のリスクマネジメントを考える上で、まったく予想もしない命にかかわるような想定外の事態が発生した場合はどのように対応すべきなのだろうか?


自然災害や事件・事故など例え想定したとしても防ぎようのないことは無数にある。マネジメントリーダーWEBに防災のリスクマネジメントを専門とする昆正和氏が次のような文章を寄せている。

 


 

こんなエピソードがあります。大地震が起こったとき、工場で働いていた外国人従業員たちは作業の手を止めるなり、全員一緒に脱兎のごとく屋外へ逃げ出した。日本人従業員の方は、避難した人・しなかった人、バラバラだった。外国人の彼らには、言葉も文化も違う馴染みのない日本という土地で、いざというとき頼れるのは自分の身一つだという意識が働いていたのでしょう。


防災の手引きなどには「あわてずに避難誘導係の指示に従い……」などと書かれてありますが、生死を分ける瀬戸際のときは、こうした理屈は通用しません。まず自分の身を守る。もちろん近くに危険に気づかない人、負傷した人がいれば大声で呼び掛けたり、全力で助けなければいけませんが、これはヤバイぞと感じたら自身の危険本能に従ってただちに逃げる。これが基本です。


マネジメントリーダーWEB

昆正和氏著:「リスクセンスを磨こう!第10回 たかが避難、されど避難」より抜粋。

 


自分の命にかかわる非常事態では「自然の感覚=本能」を研ぎ澄ますことが生死の分かれ目になる可能性がある。山登りでは自然に親しみながら絶景を楽しんだり、頂上を制覇する充実感を味わえる。しかし、自然の中に身一つで入るため自然の脅威や遭難のリスクと常に向き合うことになる。自分の命を守るためにリスクをどう回避し、リスクが発生した場合どのように判断・対処するかを体感することが貴重な経験となる。それが生まれもって持っている危険本能を研ぎ澄ますことにつながるのかもしれない。

 

具体的な現象と発生タイミングは「想定外」でも、「不測の事態がいつ起きるか分からない」と「想定」して、「自らの命を守る術」や「被害を最小限に抑える」、「被災してもいち早く復旧する」ための備えをすることは、自社のリスクマネジメントを日ごろから検証し、社内周知を徹底することで可能になる。

以下リスクマネジメント的な視点で「大雪災害と企業・自治体の対応」を検証してみた。


■大雪で学ぶべき「リスクマネジメント事例」その1

最初の事例は、大雪による渋滞で高速道路上で車内に閉じ込められた人たちに、配送中のパンを無償で配布した例である。配送中の積み荷を現場や担当者の判断で無償配布することは実際には困難なことである。通信手段も閉ざされた場合、現場判断で積み荷を無償配布すれば「重大な責任問題」を問われる可能性がある。しかし「被災した際に自身が大丈夫であれば、周囲の人命救助・協力を優先する」とあらかじめルール化し周知徹底していれば、とっさの時に悩まず迅速に行動できる。結果としてニュースやネット上ではメーカーへの賛辞が相次ぎ「これからは○○パンしか買わない」とのコメントまで紹介され企業に対しての高い評価が寄せられた。


現場の行動だけでなく、企業広報部のコメントも無償配布したことを決して驕らずに、配送先のスーパー・コンビニでの品不足を踏まえて、商品を届けることができなかったことを詫びていた。企業として本来業務の流通トラブルという本質課題に沿った取引先・ユーザーに向けたコメントとなっている。この広報コメントがあることによって企業に対しての信頼感や期待感をさらに強めたのではないだろうか。リスクマネジメントだけでなく企業価値を高めるCSRの観点からも有効な事例である。

 

東日本大震災の教訓を踏まえて近隣住民や帰宅難民と化した被災者に食料や避難場所の提供などの救助活動を行い、そのための医薬品・食料品・毛布などの物資を備蓄している企業は増えている。既に備えをしていても安心せずに、有事の際に迅速に有効な救援活動として機能するかいま一度点検してみてはいかがだろうか。東日本大震災では、せっかく救援物資を備蓄していたのに、保管場所自体が建物被害に遭い備蓄品が取り出せず機能しなかったケースも報告されている。


■大雪で学ぶべき「リスクマネジメント事例」その2

もう一つの事例は、災害復旧の対応である。被災後「いかに早く立ち直るか」がBCP/BCM(事業継続)から必要な要素となる事例である。


長野県佐久市役所では、大雪の被害状況を把握するためにTwitterを活用して、情報提供を呼びかけ、寄せられた市内各所を撮影した画像をもとに状況把握して市の職員や付近の住民に的確な指示を出し、迅速に対応したことが伝えられている。


被災状況の報告は、言葉だけではなかなか正確なイメージが伝わりにくい。現場からの報告だけでは被害の大きさが実感できず、テレビのニュース映像をみて慌てて対応する場合も多い。写真や動画などの画像情報は、言葉で説明するより瞬時に状況がわかる重要な要素となる。いまでは多くの人が写真や動画が撮影して送信できるケータイ・スマホを持ち歩いている。一昔前まではテレビ局でなければできなかったことが、誰でもできる環境が整っている。


問題はその環境をうまく利用する術を備えているかだ。東日本大震災の際も、電話はつながらないがデータ通信のSNSやTwitterはつながりやすかったたとの結果が出ている。そのため安否確認などの緊急連絡手段としてモバイルデータ通信を採用している企業は多い。非常事態に有効に機能させるためには、仕組みやルールを作るだけでなく「訓練」を定期的に行い普段からすぐに使えるように「慣れておくこと」がポイントだ。いざという時に操作に戸惑うことがないようにすることと、送られてきた画像などを読み取り正確な判断をするための経験や訓練が必要である。訓練を積み重ねることによって「報告する側」と「判断する側」の情報共有にブレが少なくなり、効果・効率的な措置を迅速に行うことが可能になる。



 

「災害は忘れたころにやってくる」という。今回幸いにして被害を受けなかった企業でも「非常時の対応(従業員/家族の安否確認・業務運営・施設/設備管理)」、「顧客・仕入れ先などの関係先の対応」、「広報(社内・社外)」、「地域・社会に対しての対応」、「緊急時の情報連絡システム」、といった広い視野での自社のリスクマネジメントとして検証してみてはいかがだろうか。いつ発生するのかわからない「地震」などの広域災害の対処に役立つはずである。


マネジメントリーダーWEB編集部

 


 

<参考>

【コラム 】リスクセンスを磨こう!  ※閲覧には無料会員登録が必要です

第3回 時間軸でリスクを捉える(1)

http://www.mng-ldr.com/member/2013/01/23/post-13.php


第4回 時間軸でリスクを捉える(2)

http://www.mng-ldr.com/member/2013/02/25/post-20.php


第5回 リスクが顕在化したときの「結果」をイメージすることの大切さ

http://www.mng-ldr.com/member/2013/03/11/post-22.php


第6回 情報リスクの今昔

http://www.mng-ldr.com/member/2013/04/24/post-26.php


第7回 オルタナティブな発想を持とう

http://www.mng-ldr.com/member/2013/05/07/post-48.php


第8回 コインの裏と表

http://www.mng-ldr.com/member/2013/05/14/post-30.php


第9回 リスクのもぐらたたき?

http://www.mng-ldr.com/member/2013/06/10/post-33.php


第10回 たがが避難、されど避難

http://www.mng-ldr.com/member/2013/07/16/post-47.php

 

第11回 大きな失敗の陰に小さなリスクあり

http://www.mng-ldr.com/member/2013/08/26/post-56.php


第12回 一人オフィスで災害に立ち向かう

http://www.mng-ldr.com/member/2013/09/18/post-62.php


昆正和氏著作「山で正しく道に迷う本」(日刊工業新聞社)

http://pub.nikkan.co.jp/books/detail/00002662

 

 

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