コラムBOX

2013年12月20日

就業規則の休職制度は社員のためのもの?それとも会社のためのもの?

会社を守るための「復職基準」規定の導入について

就業規則の休職制度は社員のためのもの?それとも会社のためのもの?

 

会社を守るための「復職基準」規定の導入について

 

 

つなぐナビ登録士業

山王社会保険労務士事務所

社会保険労務士 山王 裕之

 

例えば就業規則に次のような休職に関する規定があるとしましょう。
(実務上よく用いられている表現で厚生労働省のひな形もほぼ同じです)
―――――――――――――
第○○条(休職等)
労働者が次に該当するときは、所定の期間休職とする。
業務外の傷病による欠勤が1か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき … 6カ月
2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。
ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3 第1項により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。
―――――――――――――
この規定が休職に関する全てだとすると、休職の理由となった業務「外」の怪我や病気がどの程度治った場合に会社が復職を認めるのかの明確な基準がなく、復職に際して様々なトラブルが想定されます。
例えば休職中は給料がゼロとなりさらに休職期間満了で自然退職となることが多いため、
怪我や病気が完治していないのに無理して復職したため再び悪化して休職したり、再度の休職には至らなくても通院等の理由で欠勤を繰り返したり、投薬の影響で日常業務の成果が明らかに落ちたりすることがあります。
あるいは、会社に迷惑をかけたくないという責任感から完治していないのに復職する場合もあります。
このため、休職期間中の臨時要員確保や同僚のサポートが十分に得られない、あるいは周囲に過度の残業負担を強いる等、人事計画・採用計画が成り立たなくなります。
一方で、成果が下がっている社員に対しては役職や給料その他の処遇を下げざるを得ないという会社の思惑もあり、会社と社員との紛争に発展する恐れもあります。
そこで本稿では、復職の問題点について、就業規則の規定の見直しという視点から解決策を提示したいと思います。
そもそも「休職」とは業務「外」の怪我や病気で長期間働けなくなった場合、会社はその社員に対して、労働力を提供できないという債務不履行を理由に、解雇の通告ができます。
法律で「休職」が制度化されている公務員と異なり、一般企業には休職制度を設ける法律上の義務はありません。
しかし、多くの会社では、就業規則に休職制度を明記しています。
これは、終身雇用制のもとで、「私傷病=労働不可=即退職」となることを、会社が、会社のために防ぐ必要があるからです。
たとえば、営業成績トップ・勤続15年の社員がゲレンデで骨折して数か月歩けなくなった場合、営業活動ができないことを理由に即退職としたのでは、教育・訓練にかけた多くの時間とコストが無駄になってしまい、会社にとって大損失です。
もちろん社員にとっても、休職制度があれば、怪我や病気から回復した後の身分が保障されている安心感を得ることができます。
以上が従来の休職制度の考え方です。あくまで、社員が一時的に労働できなくなったが、
一定期間後は完全復帰できることを想定した制度です。
そこで、前述のような完治していない社員が復職してしまい、その後に欠勤や休職を繰り返してしまったり、業務成果が十分に得られなかったりすることを防ぐために、就業規則で次のような基準を定めておくとよいでしょう。
――――――――――――――――
第△△条(復職)
私傷病休職に係る「復職」とは、休職者から復職の申出があったとき又は休職期間満了時において、傷病等が治ゆ(休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に回復すること又は見込まれることをいう)し、かつ、次の各号のいずれにも該当し、又は見込まれるものと会社が判断したときとする。
(1) 職場復帰に対して十分な意欲があること。
(2) 独力で安全に通勤ができること。
(3) 会社が設定している勤務日に勤務時間の就労が継続して可能であること。
(4) 業務に最低限度必要とされる作業(事務処理、パソコンの操作、軽度の身体的作業)を遂行することができること。
(5) 日々の業務による疲労が翌日まで蓄積することがないこと。
(6) 適切な睡眠覚醒リズムが整っていること。
(7) 投薬の影響等による昼間の眠気がないこと。
(8) 業務遂行に必要な最低限度の注意力及び集中力が回復していること。
(9) 健康時に行っていた通常の業務を遂行することができる程度の健康状態に回復していること。
2 会社は、前項の判断を行うために、主治医の診断書の提出、休職者との面談及び会社が指定する
医師の診断を指示することがある。当該指示を拒否した場合であって、復職の判断が不能であるときは、
休職期間満了による退職となることがある。
3 復職日は、第1項の判断に基づき会社が決定するものとする。
この場合において、主治医の意見と会社が指定する医師の意見が異なるときは、
会社が指定する医師(労働安全衛生法13条により定められた産業医※)の意見を優先する。
4 復職した者については、本人の健康状態、業務の都合等を勘案し、その就業場所、
職種又は職務を転換することがある。
5 休職満了日までに復職日が決定できないときは、第●条(退職)の規定により退職とする。
※常時50人以上の労働者を雇用する事業場の場合
―――――――――――――――――――
このような基準を設けることにより、復職の判断はあくまで会社側にあり、休職制度は社員のみの権利ではなく、休職命令権という会社側の権利でもあることを明確にできると思われます。
就業規則の休職規定、あらためて見直してみてはいかがでしょうか。
最後に休職中の賃金がゼロであっても、厚生年金や健康保険などの社会保険料は会社・社員ともに免除されないため、保険料徴収に関するトラブルが想定されますが、こちらについては別稿でご説明したいと思います。
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山王社会保険労務士事務所
社会保険労務士 山王 裕之
【連絡先】
埼玉県さいたま市浦和区高砂3-12-24 小峰ビル5階
電話0120-05-4864
Mail: info@sr-sanno.com

今回は、就業規則に定められている「復職基準」について解説いたします。

たとえば、就業規則に次のような休職に関する規定があるとしましょう。(実務上よく用いられている表現で厚生労働省のひな形もほぼ同じです)

 


第○○条(休職等)

労働者が次に該当するときは、所定の期間休職とする。

業務外の傷病による欠勤が1か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき … (休職期間:就業年数により別途定める)。


2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。

ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。


3 第1項により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 


 

この規定が休職に関する全てだとすると、休職の理由となった業務「外」の怪我や病気がどの程度治った場合に会社が復職を認めるのかの明確な基準がなく、復職に際して様々なトラブルが想定されます。


例えば休職中は給料がゼロとなりさらに休職期間満了で自然退職となることが多いため、怪我や病気が完治していないのに無理して復職したため再び悪化して休職したり、再度の休職には至らなくても通院等の理由で欠勤を繰り返したり、投薬の影響で日常業務の成果が明らかに落ちたりすることがあります。


あるいは、会社に迷惑をかけたくないという責任感から完治していないのに復職する場合もあります。このため、休職期間中の臨時要員確保や同僚のサポートが十分に得られない、あるいは周囲に過度の残業負担を強いる等、人事計画・採用計画が成り立たなくなります。


一方で、成果が下がっている社員に対しては役職や給料その他の処遇を下げざるを得ないという会社の思惑もあり、会社と社員との紛争に発展する恐れもあります。


そこで本稿では、復職の問題点について、就業規則の規定の見直しという視点から解決策を提示したいと思います。


そもそも「休職」とはどのような制度なのでしょうか。


業務「外」の怪我や病気で長期間働けなくなった場合、会社はその社員に対して、労働力を提供できないという債務不履行を理由に、解雇の通告ができます。 法律で「休職」が制度化されている公務員と異なり、一般企業には休職制度を設ける法律上の義務はありません。


しかし、多くの会社では、就業規則に休職制度を明記しています。これは、終身雇用制のもとで、「私傷病=労働不可=即退職」となることを、会社が、会社のために防ぐ必要があるからです。


たとえば、営業成績トップ・勤続15年の社員がゲレンデで骨折して数か月歩けなくなった場合、営業活動ができないことを理由に即退職としたのでは、教育・訓練にかけた多くの時間とコストが無駄になってしまい、会社にとって大損失です。もちろん社員にとっても、休職制度があれば、怪我や病気から回復した後の身分が保障されている安心感を得ることができます。


以上が従来の休職制度の考え方です。あくまで、社員が一時的に労働できなくなったが、一定期間後は完全復帰できることを想定した制度です。


そこで、前述のような完治していない社員が復職してしまい、その後に欠勤や休職を繰り返してしまったり、業務成果が十分に得られなかったりすることを防ぐために、就業規則で次のような基準を定めておくとよいでしょう。

 


第△△条(復職)


私傷病休職に係る「復職」とは、休職者から復職の申出があったとき又は休職期間満了時において、傷病等が治ゆ(休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に回復すること又は見込まれることをいう)し、かつ、次の各号のいずれにも該当し、又は見込まれるものと会社が判断したときとする。


(1) 職場復帰に対して十分な意欲があること。

(2) 独力で安全に通勤ができること。

(3) 会社が設定している勤務日に勤務時間の就労が継続して可能であること。

(4) 業務に最低限度必要とされる作業(事務処理、パソコンの操作、軽度の身体的作業)を遂行することができること。

(5) 日々の業務による疲労が翌日まで蓄積することがないこと。

(6) 適切な睡眠覚醒リズムが整っていること。

(7) 投薬の影響等による昼間の眠気がないこと。

(8) 業務遂行に必要な最低限度の注意力及び集中力が回復していること。

(9) 健康時に行っていた通常の業務を遂行することができる程度の健康状態に回復していること。


2 会社は、前項の判断を行うために、主治医の診断書の提出、休職者との面談及び会社が指定する医師の診断を指示することがある。当該指示を拒否した場合であって、復職の判断が不能であるときは、休職期間満了による退職となることがある。


3 復職日は、第1項の判断に基づき会社が決定するものとする。この場合において、主治医の意見と会社が指定する医師の意見が異なるときは、会社が指定する医師(労働安全衛生法13条により定められた産業医)の意見を優先する。


4 復職した者については、本人の健康状態、業務の都合等を勘案し、その就業場所、

職種又は職務を転換することがある。


5 休職満了日までに復職日が決定できないときは、第●条(退職)の規定により退職とする。

 

常時50人以上の労働者を雇用する事業場の場合

 


 

このような基準を設けることにより、復職の判断はあくまで会社側にあり、休職制度は社員のみの権利ではなく、休職命令権という会社側の権利でもあることを明確にできると思われます。


就業規則の休職規定、あらためて見直してみてはいかがでしょうか。


最後に休職中の賃金がゼロであっても、厚生年金や健康保険などの社会保険料は会社・社員ともに免除されないため、保険料徴収に関するトラブルが想定されますが、こちらについては別稿でご説明したいと思います。

 


 

<プロフィール>

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