コラムBOX

2013年02月14日

「守りのCSR」から始めよう 著者:河内山信一

中小企業のための「会社を強くするCSR」講座 第3回

 

CSRには2つの側面があるというお話を第1回でお話しいたしました。コンプライアンスを基本とした「守りのCSR」は、どの会社も存在する限り、絶対に忘れてはいけないこと。まずはこの「守りのCSR」を始めましょう。
守りのCSRは、コンプライアンスや法令遵守といった基本的なことなので、言われなくても当たり前のようにやっている企業がほとんどだと思います。しかし最近は、労働法やその他の法令に接触、またはその可能性のあるグレーゾーンな条件での労働を意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に接触する可能性があるような営業行為、従業員の健康管理を無視した長時間勤務、パワハラなどが常套手段となっていたりと、いわゆる「ブラック企業」と言われる企業も存在していますので、もう一度自分の会社の実情を見直してみることをお勧めします。
◆「専任ではなく兼任担当」と「担当になった場合の取り組み」
中小企業では、特別にCSRの専門部署は置かないことがよくあります。その場合、誰がCSRを担当するのか明確になっていない状況でスタートする場合がほとんどです。
基本的に、企業は社長など創業者の想いで始まっていますので、社長自身が、または直轄の社員がCSRに取り組むことが多く、たとえば業務で必要になった、ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)といったISO企画認定取得作業の担当責任者がそのままCSR担当も兼任することも多いと思います。
その場合ISOなどの規格認定というはっきりとした目的がある場合はいいのですが、社全体のCSRとなると何から手を付けていいかわからなく、結果的に曖昧になりがちです。
まずは今の会社の現状を把握するため、下記の9つのポイントを改めて見直してみましょう。
? 業界における関連法令
? 社内規程とマニュアル(社員の行動規範)
? 企業倫理
? 社会貢献の遵守
? 企業リスクを回避するための設定された部署ごとに存在するルール
? そのルールをどのように運用しているか
? 法令遵守のための社内監査環境の確認と整備
? 社員教育システム
? 職場環境と従業員ケアシステム
◆全社理解浸透のために重要なこと
CSR担当者の悩みとして、「社内浸透がしにくい」という問題があります。全社的な取り組みをする上では、社長や担当役員といった会社の川上から、社の戦略的に重要であると半強制的に伝えることが有効です。社員の一人でも理解していない場合、その社員がちょっとくらい問題ないだろうと思った軽率な行動が、会社の存在意義が問われる事態にも発展することがあるので気を付けてください。
大手企業だと、eラーニングで決められた点数以上を取らないといけないとか、社内研修セミナーに出席しない社員の上司は減俸するなど、社内理解のためにいろいろと施策を講じています。
中小企業では社員数が少ないため、社長が一人ひとりに説明するのでも、グル―プで説明していくのでも時間があまりかからないのが利点です。だからこそ、社内イントラネットに内容を掲載し、読んでおいてください的なメールで済ませないこと。理解しないと前線で仕事させないくらい強制的に自分事にさせることが積極的参加につながります。
まとめますと、
? 当たり前だから大丈夫ではなく、自社取組みを見直してみる。
? 担当者だけでなく必ずトップコミットメントをすること。
? 理解しないと仕事をさせないくらいの自分事にさせる。
が重要な3つのポイントです。
社員全員が企業の看板を背負って業務をしていることの理解が、CSRの浸透の近道になると思います。
【コラム/中小企業CSRの最新事例】
今回の事例は中小企業のものではありませんが、中小企業にも応用できる第三者団体からの評価で「守りのCSR」を効果的に行っている事例を紹介します。
2003年のCSR元年の発端の一因にもなった「児童労働」問題。
工場で製品を作る人件費を削減することで競争力と利潤を求めた結果、いくつかの企業が子どもに労働をさせたことが発覚し、不買運動にまで発展したことがありました。
<写真1>
現在、約2億1500万人(2010年、ILO発表)の子どもたち(5?17歳)≪世界中の子どもの7人に1人≫が、教育などの重要性が理解されず、「児童労働」をしています。
企業は、知らずとその児童労働で採取された原材料を購入し、最終製品に加工し、販売している可能性があるのです。これは、原材料を調達する企業に責任があるともいえます。
■森永製菓株式会社の取り組み
産業別では、約60%の子どもたちが、農業・狩猟・林業・漁業の分野で児童労働に従事しています。その中にはコーヒー、茶、カカオ、綿花など、私たちが普段消費しているモノを作るために、長時間、危険を伴う作業をさせられている子どももいます。
森永製菓では、「1チョコ for 1スマイル」というキャンペーンで、カカオ生産地の子どもの教育を2つのNGOを通じて支援しています。これは、特別期間中1箱につき1円が寄付となるいわゆるCRM(コーズ・リレーティッド・マーケティング)ですが、2013年はその支援地でとれたカカオをDARSや特別商品に使い、商品を販売しています(写真)。これが、NGOを支援するという単純な企業の社会貢献ではなく、NGOが実際現地で活動を行い、その活動結果が企業のCSRレポートになるといった、一歩先行くCSR活動となっているのです。
<写真2>
 70g森永チョコレート<1チョコ for 1スマイル>
児童労働から子どもを守る活動をしているNGO ACEと協力し、カカオ栽培の児童労働をなくす支援を行うこと自体にも、森永製菓の新しいCSRの価値があります。単なるNGOを応援するという社会貢献ではなく、自分たちが必要としている原材料から児童労働をなくすという本業に直結しており、真のフェアトレード製品を生み出すことができるようになるからです。
もちろん、児童労働がないカカオを選択し調達することは企業の責任ですが、児童労働をなくすことは企業の本業ではありません。そこで、NGO ACEのような児童労働をなくす活動をしている団体で活動することをとパートナーシップを組んでいるのです。
今回、支援している地域で生産されたカカオを使ったチョコレートが発売されることで、その売り上げの一部がACEを通して現地の児童労働をなくす活動に使用されるという循環型社会貢献システムが出来上がりました。単なるチョコレートより競争力のあるチョコレートの発売は話題性も高く、結果、売り上げだけでなく企業ブランドにもいい影響を与えていると考えられます。
ジーンズメーカーのリージャパン株式会社も、自社のコットンの児童労働がないことを証明するために、インドのコットンの児童労働をなくす活動をしているACEと協業でCSRレビューを実施し、CSRレポートを始めているようです。
このように、実際その問題を解決している第三者団体と協業することで、単なる団体を支援していますといった社会貢献よりレベルが高い、「本業部分での社会貢献」が可能となります。企業は、単に支援したときよりも、NGOでしか得ることのできない現地の生の言葉などがフィードバックされ、さらにビジネスが発展する場合もあります。自社の本業でどのような団体と連携することで相乗効果が生まれるか考えてみることをお勧めします。
世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)
http://acejapan.org/

CSRには2つの側面があるというお話を第1回でお話しいたしました。コンプライアンスを基本とした「守りのCSR」は、どの会社も存在する限り、絶対に忘れてはいけないこと。まずはこの「守りのCSR」を始めましょう。


守りのCSRは、コンプライアンスや法令遵守といった基本的なことなので、言われなくても当たり前のようにやっている企業がほとんどだと思います。しかし最近は、労働法やその他の法令に接触、またはその可能性のあるグレーゾーンな条件での労働を意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に接触する可能性があるような営業行為、従業員の健康管理を無視した長時間勤務、パワハラなどが常套手段となっていたりと、いわゆる「ブラック企業」と言われる企業も存在していますので、もう一度自分の会社の実情を見直してみることをお勧めします。


◆「専任ではなく兼任担当」と「担当になった場合の取り組み」

 

中小企業では、特別にCSRの専門部署は置かないことがよくあります。その場合、誰がCSRを担当するのか明確になっていない状況でスタートする場合がほとんどです。


基本的に、企業は社長など創業者の想いで始まっていますので、社長自身が、または直轄の社員がCSRに取り組むことが多く、たとえば業務で必要になった、ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)といったISO企画認定取得作業の担当責任者がそのままCSR担当も兼任することも多いと思います。


その場合ISOなどの規格認定というはっきりとした目的がある場合はいいのですが、社全体のCSRとなると何から手を付けていいかわからなく、結果的に曖昧になりがちです。


まずは今の会社の現状を把握するため、下記の9つのポイントを改めて見直してみましょう。


(1) 業界における関連法令

(2) 社内規程とマニュアル(社員の行動規範)

(3) 企業倫理

(4) 社会貢献の遵守

(5) 企業リスクを回避するための設定された部署ごとに存在するルール

(6) そのルールをどのように運用しているか

(7) 法令遵守のための社内監査環境の確認と整備

(8) 社員教育システム

(9) 職場環境と従業員ケアシステム



◆全社理解浸透のために重要なこと

 

CSR担当者の悩みとして、「社内浸透がしにくい」という問題があります。全社的な取り組みをする上では、社長や担当役員といった会社の川上から、社の戦略的に重要であると半強制的に伝えることが有効です。社員の一人でも理解していない場合、その社員がちょっとくらい問題ないだろうと思った軽率な行動が、会社の存在意義が問われる事態にも発展することがあるので気を付けてください。


大手企業だと、eラーニングで決められた点数以上を取らないといけないとか、社内研修セミナーに出席しない社員の上司は減俸するなど、社内理解のためにいろいろと施策を講じています。


中小企業では社員数が少ないため、社長が一人ひとりに説明するのでも、グル―プで説明していくのでも時間があまりかからないのが利点です。だからこそ、社内イントラネットに内容を掲載し、読んでおいてください的なメールで済ませないこと。理解しないと前線で仕事させないくらい強制的に自分事にさせることが積極的参加につながります。



まとめますと、


(1) 当たり前だから大丈夫ではなく、自社取組みを見直してみる。

(2) 担当者だけでなく必ずトップコミットメントをすること。

(3) 理解しないと仕事をさせないくらいの自分事にさせる。


が重要な3つのポイントです。



社員全員が企業の看板を背負って業務をしていることの理解が、CSRの浸透の近道になると思います。




【コラム/中小企業CSRの最新事例】

 

今回の事例は中小企業のものではありませんが、中小企業にも応用できる第三者団体からの評価で「守りのCSR」を効果的に行っている事例を紹介します。


2003年のCSR元年の発端の一因にもなった「児童労働」問題。


工場で製品を作る人件費を削減することで競争力と利潤を求めた結果、いくつかの企業が子どもに労働をさせたことが発覚し、不買運動にまで発展したことがありました。


写真1.jpg


現在、約2億1500万人(2010年、ILO発表)の子どもたち(5-17歳)≪世界中の子どもの7人に1人≫が、教育などの重要性が理解されず、「児童労働」をしています。

企業は、知らずとその児童労働で採取された原材料を購入し、最終製品に加工し、販売している可能性があるのです。これは、原材料を調達する企業に責任があるともいえます。


■森永製菓株式会社の取り組み


産業別では、約60%の子どもたちが、農業・狩猟・林業・漁業の分野で児童労働に従事しています。その中にはコーヒー、茶、カカオ、綿花など、私たちが普段消費しているモノを作るために、長時間、危険を伴う作業をさせられている子どももいます。


森永製菓では、「1チョコ for 1スマイル」というキャンペーンで、カカオ生産地の子どもの教育を2つのNGOを通じて支援しています。これは、特別期間中1箱につき1円が寄付となるいわゆるCRM(コーズ・リレーティッド・マーケティング)ですが、2013年はその支援地でとれたカカオをDARSや特別商品に使い、商品を販売しています(写真)。これが、NGOを支援するという単純な企業の社会貢献ではなく、NGOが実際現地で活動を行い、その活動結果が企業のCSRレポートになるといった、一歩先行くCSR活動となっているのです。


写真2.jpg

 70g森永チョコレート<1チョコ for 1スマイル>


児童労働から子どもを守る活動をしているNGO ACEと協力し、カカオ栽培の児童労働をなくす支援を行うこと自体にも、森永製菓の新しいCSRの価値があります。単なるNGOを応援するという社会貢献ではなく、自分たちが必要としている原材料から児童労働をなくすという本業に直結しており、真のフェアトレード製品を生み出すことができるようになるからです。


もちろん、児童労働がないカカオを選択し調達することは企業の責任ですが、児童労働をなくすことは企業の本業ではありません。そこで、NGO ACEのような児童労働をなくす活動をしている団体で活動することをとパートナーシップを組んでいるのです。


今回、支援している地域で生産されたカカオを使ったチョコレートが発売されることで、その売り上げの一部がACEを通して現地の児童労働をなくす活動に使用されるという循環型社会貢献システムが出来上がりました。単なるチョコレートより競争力のあるチョコレートの発売は話題性も高く、結果、売り上げだけでなく企業ブランドにもいい影響を与えていると考えられます。


ジーンズメーカーのリージャパン株式会社も、自社のコットンの児童労働がないことを証明するために、インドのコットンの児童労働をなくす活動をしているACEと協業でCSRレビューを実施し、CSRレポートを始めているようです。


このように、実際その問題を解決している第三者団体と協業することで、単なる団体を支援していますといった社会貢献よりレベルが高い、「本業部分での社会貢献」が可能となります。企業は、単に支援したときよりも、NGOでしか得ることのできない現地の生の言葉などがフィードバックされ、さらにビジネスが発展する場合もあります。自社の本業でどのような団体と連携することで相乗効果が生まれるか考えてみることをお勧めします。



世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

http://acejapan.org/

 

 


<関連記事>

第1回 よく耳にするけど、よくわからない「CSRって何?」

http://www.mng-ldr.com/column/2012/11/22/csr.php


第2回 中小企業に必要なCSRの考え方とは?

http://www.mng-ldr.com/column/2012/12/27/post-8.php

 

第4回 自社だからこそできる「攻めのCSR」に目を向けよう

http://www.mng-ldr.com/column/2013/04/16/post-12.php


第5回 中小企業CSRの最新事例 - 前編 -

http://www.mng-ldr.com/column/2013/05/22/----.php


第6回 中小企業CSRの最新事例 - 後編 - 

http://www.mng-ldr.com/column/2013/06/10/-----1.php



<著者プロフィール>


河内山信一(こうちやま しんいち)


■株式会社シン・ファンドレイジングパートナーズ 代表取締役

■ファンドレイザー(日本ファンドレイジング協会 准認定ファンドレイザー)


≪経歴≫

1973年生まれ 東京都出身

1997年 東洋大学経済学部卒 

1997年から2007年 株式会社スタンダード通信社。営業職。大手精密機器メーカー、大手飲料メーカー、大手金融、政府外郭団体など数多く担当。主に企業の環境コミュニケーション担当として広告企画からイベント運営まで幅広く担当。2003年に大手精密機器メーカーのCSR事業準備室の立ち上げに参加、2005年愛知万博では政府外郭団体のパビリオンのイベント運営を担当など、環境やCSR周りを主に担当。 

2007年から2012年 株式会社電通。営業職。 大手総合家電メーカーの企業環境コミュニケーションなどを担当。 

2012年3月 電通を退社。

広告代理店スキルを持って社会貢献では何ができるかを考え、ファンドレイザーを目指す。 

2012年8月 第1回日本ファンドレイジング協会准認定ファンドレイザー試験に合格。 

2012年10月 株式会社シン・ファンドレイジングパートナーズを設立。 NPOなど非営利団体のファンドレイジング(資金調達)を基本としたコンサルティングを主な事業とし、企業のCSR担当者やCRM検討されている担当者に「本業に繋がるCSR」のご提案やコンサルティングも行っています。

無料相談なども行っていますのでHPから気軽にお尋ね下さい。


株式会社シン・ファンドレイジングパートナーズ

http://www.shinfundraising.co.jp/


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