コラムBOX

2012年09月05日

電子メールを保管していますか? 著者:小野寺清人

税務当局からeメールを保存するよう指導される企業が増えている

 あまり世間では注目されていないが、税務当局から電子メール(eメール)を7年以上保存するように指導される企業が増えている。寝耳に水という企業がほとんどのようである。もっとも、eメールの保存そのものは最近始まったわけではない。情報セキュリティや犯罪対策として、プロバイダーが開始してから10年以上経過している。

 

 また、企業が情報漏えい対策などのために、個人情報保護法施行のころから取り組み始めたところもかなりある。一部の上場企業では、eメールで受発注等の取引情報をやりとりしていたため、SOX法施行時に、保存を始めたところもある。だが、今回の税務当局の指摘は、対象が上場企業だけでなく全企業が対象となる可能性があることから、かなり影響が大きいはずである。

 

 厄介な問題は、契約書などの紙文書と違い、eメールはそもそも電子データであることだ。紙文書であれば歴史的な経緯もあり、書式や規則などいわゆる文書管理が確立されており、保存期限等を制定している企業も少なくない。

 

 ところがeメールの場合、電子データそのものの歴史が浅いこともあり、取り扱いに不慣れな企業が多く、情報セキュリティという観点からの取り扱いを定めている企業は少なくないが、契約文書などのような正式なビジネス文書としての取り扱い(書式や決裁、稟議の仕方、保存期限等)を定めている企業は少数である。それどころか、いまだに従業員が私的な目的で企業のeメールを使用しているケースも数多く見受けられる。ようは、eメールがビジネス目的で使用されているにもかかわらず、紙文書のようなビジネス公用文書としての明確な企業内制度が確立されていないことが問題なのである。

 

 税務当局のeメール保存の指摘は、eメールをビジネス文書として企業内で取り扱うための制度構築の契機となり得る点で注目されるものである。当然のことながら改ざん防止は必須であるが、さらに、セキュリティ対策等と違い、eメールをビジネス文書として扱うということは、案件単位で他の紙文書(契約書など)と同列に検索および閲覧が可能であることが条件となる。

 

 したがって、従業員の私的なメールが将来、税務当局等の目に触れないためにも(触れたから何かあるわけではないが)、また、より本質的には、税務対策という消極的発想ではなく、eメールをビジネス文書として適切に管理することが企業全体の文書情報管理能力と生産性向上の双方につながる点から、この機会に、保存だけでなく、eメール(およびSNSその他電子データ)の取り扱いも含めた統合的な文書管理制度の確立に取り組むべきであろう。

 余談であるが、米国では、近年、アーカイブ対策となる公文書のうち、60%以上が電子メールということである。

 

(この記事は2012年9月5日公開のものです)

 

【記事執筆】

 小野寺清人 

 (株式会社ジムコ顧問、一般社団法人日本画像情報マネジメント協会 政策提言プロジェクト座長) 

 

 

 

<著者プロフィール>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

小野寺氏画像.jpg


 

 

 

 

小野寺清人 

 

<出身> 岩手県


<経歴>
1982年 東京大学卒業
1993年 ペンシルバニア大学ウォートン校修了、経営学修士(MBA)
1982-1996年 日本電気株式会社
1996-2011年  株式会社NTTデータ経営研究所
現在、(株)ジムコ等の顧問、一般社団法人日本画像情報マネジメント協会 政策提言プロジェクト座長として活動中


<実績>
●人工知能、BI、意思決定支援、マルチメディア(文字放送、テレビ電話)、VM、シンクライアント等の先端技術を応用した情報システムの実証実験実施及び実用システム構築
●ERPパッケージやその他ソフトウエアツール等、IT分野における企画立案及びマーケティング
●経営及びIT双方に関わるテーマを中心に、経営戦略、マーケティング、新規事業立案、海外進出、ITガバナンス/マネジメント、BPM、EA、戦略的IT活用、各種コンプライアンス対応等に関するコンサルティング
●経営全般、マーケティング、新規事業、海外進出、コンプライアンス等に関してのアドバイス
●テレワーク、情報セキュリティ、文書のデジタル化、EA(最適化)等に関する委託調査研究


<主要論文・著書>
『情報システム投資の基本がわかる本』(共著)日本能率協会マネジメントセンター(2003年)『CNCネットワーク革命』(共編著)東洋経済(2002年)「最新IT活用による公的保険医療費請求業務フロー改革構想」『経営情報学会誌』(2000年)「経営者のためのITアウトソーシングABC」シリーズ第2,3,6回『ロジスティクス・ジャーナル』(2001年)"Cockpit Crew Scheduling and Supporting System" Operational Expert System Applications in the Far East. Pergamon Press(1991年)


<コメント>
ビジネスにおけるITの重要性はかつてとは比較にならないほど高くなってきています。ビッグデータもこれに拍車をかけています。しかしながら、いまだに多くの経営者がITを避けており、 「専門外だ」「情報システム部長に聞いてくれ」と言う状況です。経営者自身がITに関して最低限のことを理解 していなければ、ビジネスチャンスを失い、競争力の低下に悩まされることになります。また、コンサルタントやベンダーのことばを鵜呑みにして、全く無駄な投資をすることになるかもしれません。まず、経営者自身がITの利用と管理に関して理解し、その上で、優秀なスタッフの育成や 信頼できるパートナーを確保すべきでしょう。

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