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2012年12月20日

成長企業を生み出す予算策定6つのステップ

あなたの会社では事業を行う前に予算を立てていますか?実効性のある予算を作るための、6つのステップを紹介します。

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1、予算統括部門および担当者の決定

 

 予算は全社の事業計画に即して作成する必要があるため、事業計画を立てた部門が策定することが望ましいでしょう。一般的には経営企画部が該当します。

 

 ただ、最終的に財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の形にする必要があることから、経理部が取りまとめることも考えられますが、経理部は実績を集計することには長けているものの、事業計画や先の見通しといったものを管理するのは弱い傾向があります。

 

 財務諸表の形を理解すること自体はそれほど難しくありませんので、統括部門は経営企画部とし、必要に応じてそのサポートを経理部が行うというのがいいでしょう。

 

 もちろん、会社によっては数字に関しては経理部が全て管理する企業もありますので、自社の組織に照らして決定することが大事です。場合によっては策定を経営企画部、管理を経理部とする分業体制にすることも考えられます。

 

 これ以降は、予算統括部門を経営企画部として進めます。

 

2、 予算作成チームの編成


 会社における経営企画部の役割にもよりますが、一般的に経営企画部は管理部門に属します。予算は事業計画を実現するための行動計画ですので、現場を知らずして作成することは困難です。

 

 したがって、各部門から1、2名程度選抜し、予算作成チームを編成する必要があります。これにより、現場の意見を汲み取った予算策定が可能になり、より具体的な行動計画を組み立てることができるようになります。

 

 選抜する対象は、各部門におけるキーパーソンが望ましいでしょう。具体的には部課長などの管理職クラスです。各部門のことがわかっている人間でないと、策定する行動計画に抜けが生じてしまう可能性があるためです。

 

 予算の分類を部門ではなく、別の切り口で実施する場合は、各部門ではなく、分類に応じた人選を行う必要がありますが、少なくとも策定段階では人事部をチームに入れるようにしてください。予算の実効性を高めるには、人事評価を効果的に組み込む必要があるためです。

 

3、 作成スケジュールの設定


 一般的に予算の作成に要する期間は3か月から4か月といったところです。3月決算であれば、前年の12月くらいからスタートするイメージになりますが、進行している期の予算管理が同時並行で実施されていますので、なるべく短期間で作成することが望ましく、できれば2か月程度で作成するスケジュール感を目指してください。

 

 予算は作成することよりもその運用をどうするかの方が重要ですので、作成に多大な時間と労力を投入しないように注意することが肝要です。

 

 予算作成に時間がかかってしまう主たる要因は、事業計画の水準(経営者の目線)と部門作成の水準の乖離です。その調整のために、部門からドラフトが上がってきては差し戻すということを繰り返すわけです。

 

 ここをいかに短縮するかが短期間の予算作成の肝となります。

 

 下記にスケジュール表のテンプレートをご用意しておりますので、自社の状況に応じて修正の上、ご利用ください(テンプレートは2か月でスケジュールを組んでいます)。

 

【参考書式】
 予算作成スケジュール.xlsx

 

4、 全社予算の部門配賦とリソースの配分


 スケジュールが固まれば、設定したスケジュールに沿って予算を作成していきます。予算は各部門で作成することになりますが、各部門が自由勝手に作成すると、全社予算が想定しているものにならない危険性があります。

 

 そもそも、予算は中期事業計画・短期事業計画に整合するように作成されるもので、一定程度の目標値が既に存在します。したがって、その目標値を各部門に割り振るという手順が必要になります。

 

 この部門配賦にあたって、まず参照しなければならないのが過去の実績です。できれば3年分くらいの過去実績を、経理部から経営企画部および各部門にフィードバックします。

 

 経営企画部は各部門の過去実績を参照しながら配賦を実施していきます。各部門も同様に自部門の過去実績を参照します。

 

 また、部門予算を作成する上で、投入できるリソース(資源)というものは限られています。リソースとは、人・モノ・資金です。このうち、資金については各部門が自由に使える裁量がないというのが通常です。

 

 資金は、資金管理および財務を担当する部門(財務部など)との連携の上で管理することになりますが、各部門には資金を配分するというより、モノとしての設備(投資)予算の配賦という形で対応します。ただし、入金(回収)は各部門で責任を持って管理する必要があります。

 

 この予算の配賦やリソースの配分が完了してから、各部門で予算を策定することになります。

 

5、関係者間の調整


 予算に求めるものは、立場によって異なります。経営者側からすれば、一定程度の利益を確保するために達成すべき予算は高めになりますが、実際に行動する現場からすれば、なるべく達成可能な予算とするために低めの予算設定が行われる傾向にあります。

 

 これは、予算の達成具合を人事評価の基礎とするケースが多いために生じるわけですが、経営者と現場の温度差を埋めないことには予算が策定できません。前項の配賦される全社予算は、経営者側が設定している予算ということになります。

 

 この調整役が経営企画部になりますが、調整をしやすくするためにも、策定段階のチーム編成が必要になってきます。現場の意見を汲み取らないと経営者サイドに立った予算策定が行われてしまい、その結果、策定された予算数値は、現場からすると高すぎるという不満の声が出てしまうからです。

 

 では、どちらの側に立った調整を行うべきでしょうか?

 

 結論からいうと、経営者側に立った調整を行う必要があります。予算は経営者側が求める高い数値にしておかないと、予算の実効性が確保できないからです。

 

 「何のために予算を立てるのか?」という問いをあらためて考えてみてください。高収益で安定している企業であれば、それほど高いハードルは必要ないかもしれません。ただ、成長企業を目指すのであれば、成長するために何をするかを考えなければいけませんし、成長を実現するために具体的な行動計画を立てる必要があります。これこそ予算策定の目的なのです。

 

6、作成ルールの策定


 予算は各部門がそれぞれ行動計画を基に作成するため、各部門独自のものになるわけですが、作成にあたって一定のルールが必要になります。ここでいうルールとは、いわゆる手続きのことです。

 

 まず、予算の作成フォーマットは経営企画部で統一のものを用意します。各部門がバラバラなフォーマットを用いると、集計するのがたいへんになるばかりか、その後の運用に支障をきたすことになります。

 

 フォーマットはエクセルが一般的ですが、書式や数式が変更できないようにしておく必要があります。エクセルは集計が容易にできる半面、自由度が高いために入力ミスやエラーが起きやすいという特徴があります。特に取りまとめる経営企画部では、全部門からの膨大なデータを集計するために、ミスやエラーに気付きにくいということが起こり得ます。

 

 また、作成する予算数値には必ず算定根拠を示すことを義務付けます。算定根拠に至る行動計画も必要です。なお、作成のルールを策定する段階で、同時に管理のルールも策定します。

 

 参考までに、予算作成フォーマットをご用意しましたので、自社の組織形態や事業内容に合わせて修正の上、ご利用ください。

 

【参考書式】
 予算表テンプレート.xlsx

 

 

 

<著者プロフィール>
Lean Accounting Japan 代表 税理士 革新会計コンサルタント 榎並慶浩

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1975年兵庫県生まれ。税理士。都内の会計事務所勤務を経て、JASDAQ上場企業の財務部長、東証一部上場企業の経理部長を歴任。多面的な分析を得意とし、企業の中核で会社の基盤を強化してきた経験を生かし、2012年9月独立。会計戦略のアドバイザリーを行う傍ら、企業の勉強会、セミナー、執筆などの活動を行っている。
http://jp.linkedin.com/in/yoshihiroenami

 

 

(この記事は2012年12月20日公開のものです)

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